1-1.演劇時評『聖なる炎』公演のoutcome

俳優座劇場プロデュース公演 No.117 聖なる炎公演チラシより
とにかくまずは、ご来場(ご声援)誠にありがとうございました!
劇場に入って今年で20年になります。
『聖なる炎』は、個人的なことを言えば演劇制作者・宮澤一彦の20周年記念公演でした。芸歴何年なんて大層なものでもないのですが。同じ仕事、職場で20年。諸先輩方は二倍以上のキャリアなんて当たり前なのであまり誇れることでもないのですが。でもなかなかのものだと思います。
『聖なる炎』公演の実現が長年の夢でした。
この作品に出会った時、大部分の人にはテーマが分かって貰えないかもしれない、一つ一つ台詞が長すぎて途中で寝る人続出かもしれない。「小説家」の戯曲だから読むのはいいけれど、観るのはね……とか。宮澤くんが文学青年なのはわかるけど……とか。
いろいろ言われるだろうと思いました。
思えば2020年2月、初の企画公演、アーサー・ミラー作、水谷八也翻訳、桐山知也演出による『彼らもまた、わが息子』all my sonsもそうでした。

俳優座劇場プロデュースNo.109 彼らもまた、わが息子公演チラシより
公演終了の数ヶ月後に、偶然、同作品を別カンパニーが上演したものを観て「大女優」頼みであまりに物足りない演出だったのに、世間的な作品評価が高いなんてちょっと受け入れがたかった。(正直な気持です。どうもすみません)
なぜこうも観客の評価と私の思いがズレているのか、ずっと悩んでおりました。
否、むしろこの長年温めてきた『聖火(The Sacrad Flame)』が受け入れられない原因そのものが、ひいては今の演劇に欠けている「文藝」とか「人に対する深い探究心」なのだ!と、今回、実はみんなには見えないようにそっと大風呂敷を広げておりました。私だけではなく、憧れの大大先輩、木山潔さんをも深く魅了する戯曲が良い作品にならないわけがない!と。
蓋を開けてみれば本当に予想を上回るほど多くの方々から「素晴らしかったよ!」と評価され続ける、企画制作者にとっては至福の日々でした。
公演作品の評価と同時に、この作品をしっかりと楽しんでいただける観客が「まだまだ」世の中に存在するということそのものがとても嬉しく、改めて勇気が湧いてきました。
「久しぶりにしっかりとした演劇を観た」「新劇熱中時代にタイムスリップした」とか、なかには「この劇場にはこの手の作品を盛り上げる『蔵付きの菌』のようなものがいる」という劇場そのものを評価する感想文も多数寄せられました。
半面、劇場プロデュース公演の集客力の弱々しさに強い危機感を持ったというのも正直なところです。
東京には、この手の重厚な台詞劇を観たいと思う観客がこんなにも減っているのか! と。